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松平定信 『楽翁公遺書』
「夫れ一人一族一郷邑の善悪願欲或は私にあるも多けれど、億兆の人の皆善とする処は一箇の私心に
あらざる故に、皆天下の公理也、天下の公理は則天の心なり、人君一箇の私にかかはらずして、
公理を以て心とするにあらざれは、天命を治むとはいひ難し。」
現代語訳
「一人一人の人間の意思、一族一郷一邑の意思それ自体は、いたって私利私欲に満ちた、到底理性的
とは言い難いものである。しかし、その一人一人の人間や一族一郷一邑の意思が集まって作り出す
億兆の意思は常に正しく、私心なき天下の公理としか言いようのないものである。
治世者は私心ではなく、天下の公理、すなわち世論を踏まえて治世を行わなければならない。」